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vol.17

キーボードの新しい姿 「CT-S1」

日々、私たちが生み出しているデザインを、
開発の流れを交えて担当デザイナー本人の視点から語ります。
今回は 「CT-S1」のデザイン開発ストーリーをご紹介します。

新たなスタンダードキーボードを目指して

これまでのカシオのキーボードは「熟練者は高性能モデル」「初心者はエントリーモデル」というように、スキルに合わせたデザインと機能を持つラインナップとなっていました。そのため、ユーザーからみると「高性能で高音質ながらも、見た目はシンプルで生活に調和するキーボード」という選択肢がありませんでした。そこで、スキルにとらわれない新たなスタンダードを目指して開発を始めたのがCT-S1です。
どんなライフスタイルにも馴染み、誰もが弾く楽しさを感じられるようにと、思いを込めてデザインしました。

誰もが気軽に音楽を楽しむためには?

誰もが気軽に音楽を楽しむためには、これまでの電子楽器に見られるメカニカルで難しい印象を取り除く必要があると思いました。代わりに、使い方に迷わないシンプルな操作性と、生活空間に自然と溶け込むミニマルなデザインが必要だと考え、操作エリアのデザインパターンをいくつも考えていきました。そしてデザインの方向性をひとつに絞り込むために、社内アンケートや演奏経験者にヒアリングを行うなど、誰もが気軽に操作できるUIの実現を目指して検討を重ねました。

シンプルでミニマルな工夫

演奏に集中できるように、キーボードにとって必要な鍵盤とボタン以外の要素は、できる限り存在感を抑えました。メーカーロゴやブランドロゴですら演奏中のノイズと捉え、通常は印刷にして目立たせるところをあえて彫刻文字にしています。「売り方に関わるし、この提案はさすがに通らないだろうな」と思っていましたが、ミニマルデザインのコンセプトに共感してもらうことができ、社内関係者の同意も得て彫刻文字が採用となりました。一方で鍵盤根元のケースには鍵盤からスピーカーに伝わる音の波形をイメージした形状をあしらったり、彫刻文字は通常の3倍の深さにしてモノブロック感を強調したりと、ミニマルな造形の中で、楽器ならではのエモーショナルな価値も大切にしたいと思ってデザインしました。

一から開発した混色スピーカーネット

S1の最大の特徴となる混色クロス素材を用いた長尺のスピーカーネット。糸の染色から関わったカシオオリジナルの生地です。
製品面積の3割を占める継ぎ目のないこの部品は、製品全体の印象を大きく左右する最も重要な要素で、仕上げるのに最も苦労しました。まず音抜け試験をクリアし、プラスチックや他素材との相性を見極めながらベストな生地を選んでいます。次に色なのですが・・・色味がなかなか意図通りに仕上がりません。いつもなら海外の工場に出張して現地で色の確認や調整を行いますが、新型コロナウイルスの影響で叶わず、工場からサンプルを輸送してもらって確認、再調色依頼の繰り返し。後半は調整が間に合うのか心配で心配で・・・結果たくさんの方々のご協力で生地は仕上がり、様々なインテリアに馴染むデザインに仕上げることができたと思います。

生活空間と調和する新しいカラーリング

最初は黒1色の企画でした。しかし、企画内容と何度も向き合う中で、「キーボードの本質である「音色を選ぶ」ことと同じように、お客様が自分の好みに合った色を選べた方が楽しいんじゃないか」と思うようになりました。他部署へのデザインプレゼン時にイメージスケッチと一緒にカラバリの主張をしたところ、2色追加が決定しました。企画の練り直しが発生するタイミングだったにも関わらず、その場での追加色の決断に関係者のこのモデルにかける思いを感じ、デザイナーとして熱くなる瞬間でした。
色はこれまでの電子楽器のような「ステージで映えるビビッドな色味」ではなく、家具の中に溶け込むように「ファニチャーの色調」を取り入れています。例えば赤なら黄みがかった温もりある赤、白なら落ち着きのあるホワイトグレーにするなど生活空間との調和を目指しています。鍵盤根元のフェルト部品もボディカラーに合わせ、拘ってそれぞれ色を変えました。
また商品化にはなりませんでしたが、最初はブルーのカラーバリエーションも検討していました。今後のカラーバリエーションとして、みなさまにもお披露目できることを楽しみにしています。

素敵な音があると、なんだかうれしくなる。そのシンプルな佇まいは自然とお部屋に溶け込み、
思わず弾きたくなる心地よい音色は、日々の生活に彩りを添えてくれるはず。
そんなライフスタイルをイメージとしたプロモーションデザインにしました。

今後もプロダクトとコミュニケーションの両面からCasiotoneの世界観を伝えていきたいです。

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