SPECIAL

COLUMN

Vol.12018.05.25

カメラマン 内田眞樹 が語る
ファインダー越しに見る石川遼の素顔

スペシャルコラムでは、石川 遼に親しい関係者が素顔の石川 遼を語ります。
第一回は、ゴルフトーナメントを取材するカメラマンの内田眞樹さん。
記憶に残っている写真と共に石川 遼のエピソードを語ってもらいました。

強い選手の共通点

まず第一に、カメラマンとして撮っていて楽しいことが遼くんの魅力です。
どんなカットでもさまになること。被写体が良いというのはあるけれど、イケメンでもなかなか良い写真が撮れない選手もいますから、外見だけでもないんです。 佇まいというか、仕草というか、とにかく絵になる選手です。そしてこの“絵になる”というのは強い選手に共通すること。独特の世界観を持っていると感じます。 もうひとつ、ラウンド中に見せる顔がとても良いんですよね。決して喜怒哀楽を出す方ではないと思うけど、かえってそれに惹きつけられる。若いけど、どこか哀愁がある表情を見せるんです。同じ顔でもシチュエーションで考えていることが変わるような、見る人の想像をかき立てる写真が撮れるんです。さらにクラブを離すタイミングも彼ならではのカット。多くの選手がミスをした際は、インパクト後のフィニッシュに行く前に手を離しますが、彼はフィニッシュまで体とクラブが回った後に手を離す。だからクラブが前に飛ぶんです。ミスショットまで、フォトジェニックな男です。

「あ、遼くんは大丈夫だ。」そう確信した1枚

多くの写真を撮影してきた中で、去年のカシオワールドオープンでの1枚が最近のお気に入りです。10番スタートだった初日、彼にとってフィニッシングホールとなる9番で撮影をしていました。米ツアーでシード権を逃し、国内ツアーに参戦しても5戦連続予選落ちなど、なかなか調子が上がらない中、この日も1ホールを残して2オーバー。いつもならスタート前やインターバルなどで会話をすることがありますが、日本に帰ってきてから話す機会がなかったこともあり、何となく声をかけにくい雰囲気がありました。そんななか撮れたのがこの1枚です。歩いている姿を撮ろうと、ティーグラウンドに僕一人が待ち構えていた時、イメージ通り近くを横切ったのでシャッターを切りました。そんな僕に気付いてはいるものの、涼しい顔でティーショット。だから、すぐには気付きませんでしたが後から見てビックリ、カメラに向かってさり気なくVサインをしていたんです。

普段からファンやメディアに対して分け隔てなく接し、たとえゴルフの調子が悪くてもそれを引きずらない、変わらぬ対応をするのが彼の魅力です。そのあたりの気持ちの切り替えがとても上手いと感じます。高校生からメディアに追いかけられ、ゴルフだっていつも良いわけではないのに、人への接し方は変わらない。すいぶん前は、「無理しているなぁ」と感じることがありましたが、最近はいつも“自然体”。それを象徴するエピソードもつきません。どうしたらこうなるのって、聞きたくなるくらい良い子ですよ。

毎日変わるG-SHOCKが遼くんの代名詞

一ファンとして、会場やテレビではなかなか観られないところが見たいと思って撮っているのが手元のアップのカットです。女子選手ならネイルやブレスレット、そして彼なら時計を撮るのが、今となってはルーティンワークになっています。そんな写真を彼も見てくれているらしく、時々「今日は緑」なんて会話をしています。余談ですが、時計を撮るのって結構難しいんです。パンツやトップス、時計と色を合わせているものと、いつも動いている手、しかも文字盤を入れるとなると、角度とタイミングは限れられますからね。

もうひとつ、最近撮った写真の中で、いまの好調を裏付ける1枚があります。見ている方が痛くなるくらいのタコが指にできたところを撮影したものです。調子が悪ければ、練習して乗り越える。どんなに結果がわるくても、くさることなく前を向き続ける、彼を象徴する1枚です。

「男子ツアーを引っ張り続けてほしい」

いま声をかけるとしたら、もうこの言葉に尽きますね。最年少で選手会長に就いて、周りの期待を一身に背負っていますから、彼ならやってくれるんじゃないかと思っています。米ツアーでは、海外選手のファンサービスやツアーの良いところを目の当たりにしているはず。国内男子ツアーの勢いを取り戻す原動力になってほしいと思います。もちろん選手としても、年間複数回優勝をはたして賞金王争いを演じてほしい。華のあるプレーヤーですから、カメラマンとしても、彼がいるといないじゃ大違い。大会を盛り上げて、僕らを忙しくさせてほしいです。そうなると、「遼くんばかりじゃなくて」って、他の選手も奮起するはず、ツアーがいい方向に向かってくれると嬉しいです。ゴルフを知らない人でも「石川遼」の顔と名前は一致するというくらい、やっぱり凄い選手であることは間違いない。まだ26歳と若く、多くを期待するのはかわいそうという考え方もありますが、型にはまらず大きなことをやってのける力のあるスター選手。これからも、そんな彼を追いかけたいです。

内田 眞樹
内田 眞樹/カメラマン

1966年、東京都生まれ。あるゴルフトーナメントを観戦した際、フィールドで撮影しているカメラマンが輝いて見えたことがきっかけで、ゴルフ専従カメラマンとしてのキャリアをスタートする。現在、トーナメント撮影歴16年。「ゴルフダイジェスト・オンライン」では、2009年から国内外ツアーの撮影で活躍。ツアープロとの親交も深く、独特な写真キャプションにはファンが多い。

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(※)内田眞樹カメラマンは2018年5月11日に急逝されました。
この記事は直前の4月に行った取材をまとめたもので、ご家族の希望もあり、
当初予定通り5月25日に公開いたしました。内田カメラマンのご冥福をお祈りいたします。